賃貸退去日割りは、退去月の家賃がいくら戻るか、または追加でいくら払うかを左右します。日割り精算の契約なら月途中の退去で家賃を抑えやすい一方、月末締めや日割りなしの契約では、数日しか住まなくても1ヶ月分かかることがあります。退去日を決める前に、契約書の精算条項を確認してください。
退去時家賃の精算ルール
日割りか月割りか
退去月の家賃精算は、法律で一律に決まっているものではなく、契約書の定めが出発点です。契約書に「退去月の賃料は日割り計算する」とあれば、解約日までの日数で計算します。「退去月は日割りしない」「月割りとする」と書かれていれば、月途中で退去しても1ヶ月分の家賃が発生することがあります。
入居時は初月家賃が日割りだったため、退去時も当然に日割りだと思い込む人がいます。しかし、入居月と退去月で扱いが違う契約もあります。退去時の条項を個別に確認する必要があります。
解約日が基準になる
日割り計算では、荷物を運び出した日ではなく、契約上の解約日が基準になることが多いです。6月20日に引越しを終えても、解約日が6月30日なら6月30日まで家賃が発生します。鍵返却日、退去立会い日、解約日がずれる場合は、どの日で家賃が止まるかを管理会社へ確認します。
用語の違いは賃貸の解約日と退去日の違いで詳しく解説しています。
日割り計算の基本
実日数で割る方法
日割り計算で多いのは、その月の実日数で割る方法です。月額家賃が90,000円、6月の解約日が6月20日なら、90,000円 ÷ 30日 × 20日 = 60,000円が6月分家賃です。7月分を前払いしていなければ、6月分として60,000円を支払います。すでに6月分90,000円を払っていれば、30,000円が返還または敷金精算で調整されます。
2月は28日または29日、7月や8月は31日で割るため、同じ月額でも日割り単価が変わります。精算書では、分母が何日になっているかを確認します。
家賃90,000円で15日退去の場合、6月なら90,000円 ÷ 30日 × 15日 = 45,000円です。7月なら90,000円 ÷ 31日 × 15日 = 約43,548円になります。2月なら90,000円 ÷ 28日 × 15日 = 約48,214円です。同じ15日退去でも、月の日数で数千円の差が出ます。
30日固定で割る方法
契約によっては、退去月にかかわらず30日で割る方法を採用します。月額90,000円なら日割り単価は3,000円です。31日ある月でも30日固定、2月でも30日固定で計算されるため、実日数方式とは数百円から数千円の差が出ます。
どちらの方式が正しいかは契約書次第です。精算書だけを見て判断せず、「賃料の日割り計算は1ヶ月を30日として計算する」などの条項があるか確認します。
30日固定なら、家賃90,000円で15日退去はどの月でも45,000円です。7月15日退去では、実日数方式の約43,548円より1,452円高くなります。2月15日退去では、実日数方式の約48,214円より3,214円安くなります。借主に有利か不利かは退去月で変わるため、精算書の金額だけでなく、契約書の計算方式と対象日数を照合します。
月の途中で入居したときの計算方式と、退去時の計算方式が同じとは限りません。初月は実日数、退去月は30日固定という契約もあります。入居時の請求書ではなく、契約書の退去月精算条項を見て判断してください。
月末締め契約での退去日選び
中途解約でも1ヶ月分発生する場合
月末締め契約では、解約日を月末に合わせる運用がされることがあります。たとえば「解約は月末をもって成立し、退去月の日割り精算は行わない」とある場合、6月5日に退去しても6月30日まで家賃が発生します。引越しが早まっても、家賃は下がりません。
この契約で月初退去にすると、旧居を使わない期間の家賃が長くなります。新居の契約開始日を調整できるなら、旧居の月末までに引越しと立会いをまとめるほうが負担を抑えやすくなります。
契約書では「解約日は月の末日とする」「退去月の賃料等は日割り計算しない」「月の途中で明け渡した場合でも、当月分の賃料等を全額支払う」といった文言で現れます。これらは、部屋を使った日数ではなく、契約終了月を単位に精算する考え方です。
たとえば6月3日に引越し、6月5日に鍵返却を終えても、契約上の解約日が6月30日なら6月分90,000円が発生します。7月1日に退去がずれ込むと、契約によっては7月分まで問題になるため、月初の数日遅れは負担が大きくなります。月末締め契約では、引越し当日だけでなく鍵返却と立会い完了日を月内に収めることが重要です。
月初退去が不利になりやすいのは、旧居の家賃だけでなく新居家賃も同時に始まるためです。旧居が月末締め、新居が日割り開始なら、月初の数日間は旧居1ヶ月分と新居日割りが重なります。新居の契約開始日を遅らせられるか、旧居の立会いを月末に寄せられるかを先に確認します。
月末が立会いで埋まるリスク
月末退去を選ぶ人は多いため、退去立会いの予約が集中します。特に3月末、9月末、年末は管理会社の予定が埋まりやすく、希望時間を取れないことがあります。月末締め契約で月末退去を狙うなら、退去連絡と同時に立会い候補日を複数出します。
退去連絡の期限は賃貸退去は何ヶ月前に連絡する?で確認してください。
共益費・管理費の日割り扱い
家賃と同じとは限らない
共益費・管理費は、家賃とセットで日割りされる契約もあれば、月額固定で日割りしない契約もあります。共用部の清掃、設備保守、管理業務に充てる費用という性質から、日割りしない運用が採られることもあります。
精算書では、家賃だけでなく共益費、管理費、町内会費、定額水道料、24時間サポート費、インターネット利用料などの扱いを確認します。家賃は日割りなのに、共益費は1ヶ月分という精算もあり得ます。
前払い済み費用の返還
家賃や共益費を翌月分前払いしている場合、解約日以降の分は返還または敷金精算で調整されます。ただし、未払い家賃、短期解約違約金、原状回復費用があると、返還額から差し引かれます。民法622条の2は、敷金が賃貸借に基づく金銭債務を担保する目的の金銭であることを定めています。
敷金精算に組み込まれる場合
日割り返金がある場合でも、すぐに単独で振り込まれるとは限りません。敷金を預けている物件では、退去月家賃の過不足、共益費、原状回復費用、クリーニング費用をまとめて精算し、残額を返金する流れが一般的です。前払い家賃の返金額だけを先に受け取れると思っていると、退去後の資金計画がずれることがあります。
精算書では、敷金、前払い家賃、日割り返金、借主負担費用が同じ表の中で相殺されます。返金額が想定より少ないときは、日割り計算の誤りなのか、原状回復費用が差し引かれているのかを分けて確認してください。
駐車場代・町内会費・ネット費の扱い
駐車場契約が別契約の場合
部屋とは別に駐車場契約を結んでいる場合、解約予告期間や日割り精算が住居部分と違うことがあります。住居は1ヶ月前通知、駐車場は月末解約のみという契約もあります。車を先に手放した、転居先で駐車場が早く使える、といった事情があっても、契約上の解約日までは利用料が発生します。
駐車場の保証金や敷金がある場合は、車室の原状回復や未払い利用料と精算されます。住居の敷金とは別に返還時期が設定されていることもあります。
定額サービス費
町内会費、定額水道料、インターネット利用料、24時間サポート、口座振替手数料は、月額固定で日割りしないことがあります。小さな金額でも、複数重なると精算額に影響します。契約書、重要事項説明書、入居時の費用明細を見て、何が毎月請求されているか洗い出します。
インターネット回線を個別契約している場合は、管理会社ではなく回線事業者への解約も必要です。撤去工事が退去日以降になると、管理会社との調整が必要になることがあります。
損をしにくい退去日の選び方
日割り契約なら早い退去が有利
日割り契約では、旧居の解約日を早めるほど家賃負担は減ります。ただし、新居の家賃開始日が早すぎると二重家賃が増えます。旧居家賃、新居家賃、引越し費用、立会い可能日を合わせて、総額で比較します。
たとえば旧居家賃が月90,000円、新居家賃が月120,000円なら、新居の家賃日額のほうが高いことがあります。旧居を早く解約しても、新居の契約開始が前倒しになるなら、全体の負担が下がらない場合があります。
月末退去か翌月初退去かで迷うときは、家賃差と引越し料金差を並べます。旧居家賃90,000円の日割りで、月末から翌月3日に延ばすと旧居家賃は約9,000円増えます。一方、月末の引越し見積もりが120,000円、翌月平日が80,000円なら、引越し費用は40,000円下がります。この場合は、家賃だけでは翌月初が不利でも、総額では翌月初のほうが安くなる可能性があります。
月末締めなら月末近くを使う
月末締めや日割りなし契約では、月初退去のメリットが小さくなります。どうせ1ヶ月分かかるなら、月末までに引越し、掃除、立会いを終える計画が合理的です。とはいえ、月末は引越し費用が高くなりやすく、予約も混みます。家賃だけでなく引越し費用も含めて判断します。
月末締めで月末の引越しが極端に高い場合は、月中に荷物を出し、月末までに掃除や立会いだけ残す方法もあります。旧居の家賃は下がりませんが、引越し料金を抑えながら契約上の解約日を月末に合わせられます。注意点は、鍵を返すまで火災保険、電気、水道、室内管理の責任が残ることです。早く荷物を出した後も、ブレーカー、戸締まり、郵便物、残置物を確認できる日を確保します。
二重家賃を含めて比べる
退去日を選ぶときは、旧居だけでなく新居の家賃開始日も見ます。旧居を10日早く解約できても、新居の契約開始が15日早まるなら、二重家賃の総額は増えることがあります。旧居の日割り単価、新居の日割り単価、引越し料金、ホテル代や一時保管料の有無を並べて比較します。
家賃だけを見れば月末退去がよく見えても、繁忙期の月末は引越し料金が上がりやすいです。反対に平日や月中の引越しが安くなる場合、日割り家賃と引越し費用を合算すると月中退去のほうが負担を抑えられることもあります。契約条項と実費を合わせて判断します。
1〜3月の繁忙期は、家賃の数日分より引越し料金の差が大きくなることがあります。反対に5〜8月の平日は引越し費用が落ち着きやすく、日割り家賃を優先して早めに解約する判断が合うこともあります。退去日を決める前に、旧居の最終家賃、新居の初月家賃、引越し費用、ネット撤去や粗大ごみの予約可能日を一枚のメモに並べると、見かけの損得に引っ張られにくくなります。
家族世帯では、学校や勤務先の都合で週末に作業が集中しがちです。週末料金が高いなら、平日に荷物だけ搬出し、週末に掃除と立会いを行う分割も検討できます。ただし、鍵返却日が家賃計算に影響する契約では、分割した結果として精算日が後ろにずれないか確認が必要です。
精算書での日割り計算の確認方法
計算式を再現する
精算書が届いたら、月額家賃、共益費、解約日、対象日数、分母の日数を確認します。「日割り家賃」とだけ書かれている場合は、計算式の提示を求めても構いません。90,000円を30日で割ったのか、31日で割ったのか、共益費を含めているのかで金額は変わります。
誤りを指摘する文面
管理会社へ確認するときは、「退去月家賃が高い」ではなく、具体的に書きます。「契約書第○条では退去月は日割り精算とされています。解約日は6月20日、月額賃料は90,000円のため、6月分は60,000円ではないかと考えています。精算書の計算根拠をご教示ください」という形です。
精算後の支払い時期は退去費用はいつ払う?で確認できます。
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出典・参考文献
- 民法(e-Gov 第617条・第618条・第622条の2): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 借地借家法(e-Gov 第27条・第28条): https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」案内ページ: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html