エアコンクリーニングは退去時に実施されることが多い作業ですが、入居中ににおい、カビ、効きの悪さが気になって依頼するケースもあります。設備付き物件では管理側がクリーニング費用を負担するのが原則となる場面がある一方、入居者の使用状況や依頼目的によっては借主負担になることがあります。
賃貸で注意したいのは、エアコンが貸主の設備なのか、借主が持ち込んだ私物なのかという点です。貸主設備であれば、故障や破損が発生した際の修理責任、業者指定、メーカー保証の扱いが関係します。クリーニングは単なる清掃に見えても、分解洗浄で本体カバーや基板、ドレンホースに触れるため、事前確認なしに依頼すると責任の所在が曖昧になります。
エアコンクリーニングの費用
| タイプ | 費用相場(台) |
|---|---|
| 壁掛けタイプ(通常) | 8,000〜12,000円 |
| 壁掛けタイプ(お掃除機能付き) | 13,000〜20,000円 |
| 天井埋込タイプ | 20,000〜35,000円 |
お掃除機能付きエアコンは分解に手間がかかるため、通常タイプより高くなります。
見積もりでは、室内機だけの洗浄か、室外機洗浄、防カビコート、ドレンホース洗浄、完全分解洗浄まで含むかを分けて確認します。退去精算で争点になるのは「ハウスクリーニングに含まれる通常清掃」なのか、「著しい汚れを落とす特別清掃」なのかという点です。標準作業の範囲を契約書や見積書に残しておくと、借主負担を求める場合の説明がしやすくなります。
エアコンタイプ別クリーニング費用相場
壁掛けタイプのお掃除機能なしは、1台8,000〜15,000円程度が目安です。家庭用賃貸で最も多いタイプで、作業時間は1〜2時間程度に収まることが多く、繁忙期以外は比較しやすい価格帯です。お掃除機能付きの壁掛けタイプは、分解部品が多く、センサーや配線の扱いも必要になるため、15,000〜25,000円程度まで上がります。
天井埋め込みタイプは20,000〜40,000円程度です。ワンルームや一般的なアパートでは少ないものの、店舗併用物件、事務所利用可物件、高グレードマンションで採用されることがあります。室外機洗浄は5,000〜10,000円、防カビコートは2,000〜5,000円程度が追加オプションの目安です。室外機は汚れが冷房効率に影響することがありますが、退去時の原状回復費として借主へ当然に請求できる項目ではありません。
大手業者を見ると、ダスキンやおそうじ本舗は料金体系と作業範囲が明示され、補償体制も確認しやすい一方、地域の個人業者やくらしのマーケット掲載業者は価格が抑えられることがあります。賃貸管理では、価格だけでなく、損害賠償保険、作業報告書、写真提出、鍵預かり対応の可否まで含めて選ぶと、退去後の設備トラブルを減らせます。
借主負担の判断基準
借主負担になるケース
- フィルター掃除を長期間怠ったことによる著しい汚れ・カビ
- タバコのヤニがエアコン内部に付着している場合
- ペットの毛がフィルターに大量に詰まっている場合
借主負担にならないケース
- 通常使用による軽微な汚れ
- エアコン本体の経年劣化
- 冷媒ガスの自然減少
- リモコンの電池切れ・故障
判断の軸は、通常使用を超える汚れか、借主が清掃義務を著しく怠ったかです。フィルターにほこりが少し付いている程度であれば、通常使用の範囲と見られやすい一方、喫煙によるヤニ、ペットの毛、油煙、長期間のフィルター未清掃による内部カビは、追加清掃費の根拠になります。請求する場合は、退去立会い時の写真、においの状況、フィルターや吹出口の状態を記録します。
入居時・入居中・退去時の負担区分
入居直後にエアコン内部のカビ臭、吹出口の黒カビ、冷暖房不良が見つかった場合は、貸主側の設備提供責任として管理会社へ相談するのが基本です。入居者が使い始める前から汚れや不具合があったのであれば、借主の使用によるものとはいえません。入居時チェックシートや入居後すぐの写真を残しておくと、費用負担の説明が通りやすくなります。
入居中に、快適性向上や定期清掃の目的でエアコンクリーニングを依頼する場合は、借主負担が一般的です。ただし、設備としての不具合が疑われる場合、たとえば冷風が出ない、水漏れする、異音がある、リモコン操作に反応しないといった症状では、清掃ではなく修理や交換の問題です。先に管理会社へ連絡し、清掃で対応するのか、設備点検として扱うのかを切り分けます。
退去時は、通常使用による軽微な汚れであれば貸主負担、借主の過失や使用方法に起因する著しい汚れであれば借主負担となります。賃貸借契約書に「退去時エアコンクリーニング費用は借主負担」とある場合でも、金額、対象台数、通常清掃との関係、特別清掃の範囲を確認します。特約があるからといって、設備劣化や故障まで借主負担にできるわけではありません。
賃貸エアコンクリーニング前の管理会社相談フロー
賃貸で事前相談が必要な理由は、設備保証、破損リスク、業者指定の3点です。分解洗浄中にルーバーや基板を破損した場合、誰が修理費を負担するのかを事前に決めていないと、借主、業者、管理会社の間で揉めやすくなります。メーカー保証や管理会社の修理履歴に影響する場合もあります。
相談時は、電話で症状を伝えた後、メールや問い合わせフォームで記録を残します。文面は「貸主設備のエアコンについて、吹出口のカビとにおいが気になるためクリーニングを検討しています。費用負担者、指定業者の有無、作業時の注意点をご確認ください」のように、依頼目的と確認事項を分けると伝わりやすくなります。
確認事項は、費用負担者、業者指定の有無、作業可能な範囲、養生範囲、駐車場代、作業後に必要な報告書の有無です。自費で購入したエアコンでも、壁の配管穴、室外機置場、ドレン排水、共用部の使用が関係するため、事前相談を推奨します。無断で業者を入れ、作業後に水漏れや故障が出た場合、管理側の保証対象外と扱われることがあります。
管理会社向けの実務ポイント
- 設備付きエアコンの耐用年数は6年(ガイドライン準拠)。6年以上経過したエアコンの故障は、管理側負担で交換するのが一般的
- 退去のたびに毎回クリーニングするかは管理会社の判断。ハウスクリーニングにエアコン清掃が含まれているか確認する
- 入居者持ち込みのエアコンは入居者の所有物。退去時の撤去・原状回復(ビス穴の補修等)は入居者負担
- エアコンの設置台数が多い物件では、退去ごとの全台クリーニングがコスト増の要因になる。稼働状況に応じた判断が必要
管理会社側では、退去時に毎回全台を洗う運用と、汚れがある台だけを洗う運用のどちらにするかを決めておきます。毎回洗浄は入居者満足につながりますが、戸数が多い物件では費用が積み上がります。汚れがある台だけを対象にする場合は、吹出口、フィルター、外装、リモコン、製造年式をチェックリスト化し、担当者ごとの判断差を減らします。
喫煙可物件やペット可物件では、標準的な退去清掃よりエアコン内部の汚れが強くなりやすいため、募集条件、特約、入居時説明をそろえることが重要です。借主負担を求める可能性があるなら、入居時の状態写真と退去時の比較写真を残し、単なる経年汚れではないことを説明できるようにします。
エアコンクリーニング業者選びの3つのポイント
1つ目は、損害賠償保険に加入していることです。エアコンクリーニングでは、水濡れ、基板故障、ルーバー破損、壁紙の汚損が起こり得ます。保険加入の有無だけでなく、作業者本人が補償対象か、賃貸設備の作業に対応しているかを確認します。
2つ目は、実績と口コミです。比較サイトを使う場合は、最低100件以上のレビューを目安に、直近の評価、低評価の内容、返信姿勢を見ます。価格が安くても、作業時間が極端に短い、追加料金の説明が曖昧、駐車料金や汚れ追加費を当日請求する業者は避けた方が無難です。
3つ目は、料金体系の透明性です。お掃除機能付き、室外機、防カビコート、複数台割引、駐車場代、キャンセル料を事前に確認します。大手業者は個人業者より1.3〜1.5倍程度高くなることがありますが、品質の安定、研修、補償、管理会社への報告書対応で差が出ます。賃貸管理では、1回の安さより、作業後の設備トラブルを抑えられる業者を選ぶ方が運用しやすくなります。
発注前には、型番写真を業者へ送っておくと見積もりの精度が上がります。お掃除機能の有無は入居者が外観だけで判断しにくく、当日になって追加料金が発生することがあります。管理会社が空室で発注する場合は、ブレーカーの位置、水道使用の可否、作業車の駐車場所、鍵の受け渡し方法も事前に決めておきます。
作業後は、吹出口、フィルター、カバー、周辺壁紙、床の養生跡を確認します。水漏れや異音は作業直後ではなく数日後に出ることもあるため、入居前清掃では試運転時間を確保し、作業報告書と写真を保存します。退去者へ費用請求する場合も、作業前後の写真があると、通常清掃を超える汚れだったことを説明しやすくなります。
出典・参考文献
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」案内ページ: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
- 国土交通省 ガイドライン本文PDF: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
- 国土交通省 別表第2(経過年数による負担割合の参考図): https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf
- 民法(e-Gov 第621条 賃借人の原状回復義務): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表(器具及び備品): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/hojin/genka/pdf/2100_01-15.pdf
- ダスキン サービスマスター 価格・料金一覧: https://www.duskin.jp/servicemaster/service-list/
- おそうじ本舗 エアコンクリーニング料金: https://www.osoujihonpo.com/house-cleaning/aircon/price/
- くらしのマーケット エアコンクリーニング料金比較: https://curama.jp/aircon/
- 国民生活センター 賃貸住宅退去時のトラブル相談事例(2021年7月公表): https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210701_1.html