原状回復ガイドラインの耐用年数表【2026年版】クロス6年・フローリング・畳の借主負担早見

監修

賃貸リフォーム研究所 編集部

原状回復・退去費用の専門メディア

賃貸物件の原状回復・退去費用トラブルに関する正確な情報発信を行う編集チーム。国土交通省ガイドラインや民法の規定に基づき、退去者・管理会社双方の視点から解説記事を制作。

退去費用の見積書に「クロス張替え 8万円」「クッションフロア張替え 6万円」と書かれていても、その全額が借主負担になるとは限りません。国土交通省の原状回復ガイドラインでは、内装材や設備の耐用年数をもとに、経年劣化分を差し引いて借主負担を計算する考え方が示されています。

ただし、耐用年数は「古ければ必ず無料になる」というルールではありません。まず借主の故意・過失による損傷か、通常損耗・経年劣化かを判定し、借主負担に該当する場合にだけ残存価値を計算します。原状回復義務の前提は原状回復義務とはで整理しています。

この記事では、国交省ガイドラインの耐用年数、経年劣化控除の計算式、入居年数別の負担シミュレーション、設備や畳・フローリングの特殊論点を、部位別の詳細ページへつなぐハブとして解説します。

耐用年数は借主負担を減らすための基準

民法621条は、通常の使用で生じた損耗と経年変化を借主の原状回復義務から除外しています。民法622条の2は、敷金から控除できるのは賃貸借に基づく債務に限るという考え方を明文化しています。

国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、この民法の考え方を退去精算の実務に落とし込んだものです。借主の過失で内装を毀損した場合でも、入居期間中に自然に価値が下がった分まで借主に負担させるのは公平ではありません。そのため、ガイドラインは部位ごとに耐用年数を置き、耐用年数に応じて借主の負担割合を減らす考え方を採っています。

重要なのは順番です。最初に「誰の負担か」を判定し、次に「いくら負担するか」を計算します。日焼け、家具の設置跡、通常使用による軽い摩耗は貸主負担であり、耐用年数の計算に入る前に借主負担から外れます。借主負担になる項目の全体像は国交省ガイドライン解説を参照してください。

部位別の耐用年数一覧

国土交通省ガイドラインで定められた主な部位の扱いを一覧にすると、次のようになります。壁紙(クロス)、床材(クッションフロア・カーペット・畳・フローリング)、襖・障子、鍵、設備機器が対象です。退去費用の見積書を見るときは、部位名、施工範囲、入居年数、残存価値率がそろっているかを確認してください。

部位・設備ガイドライン上の扱い詳細ページ
クロス(壁紙)6年で残存価値1円壁紙クロスの耐用年数
クッションフロア(CF)6年で残存価値1円クッションフロアの耐用年数
カーペット6年で残存価値1円カーペットの耐用年数
畳床6年で残存価値1円畳表の耐用年数
畳表消耗品に近く、経過年数は考慮しない畳表の耐用年数
フローリング部分補修経過年数は考慮しないフローリングの耐用年数
フローリング全面張替え建物の耐用年数に準じるフローリングの耐用年数
襖紙・障子紙消耗品に近く、経過年数は考慮しない襖・障子の耐用年数
紛失・破損は経過年数を考慮しない鍵の耐用年数と負担区分
エアコン6年で残存価値1円エアコンの耐用年数
流し台・コンロ・便座など6年を基本に定額法で計算設備機器の耐用年数
ユニットバス建物の耐用年数に準じるユニットバスの耐用年数

「フローリングは15年」といった一律の説明を見かけることがありますが、ガイドライン上は単純ではありません。小さな傷の部分補修は経過年数を考慮せず、部屋全体を張り替えるような場合は建物本体の耐用年数を使います。木造なら22年、鉄筋コンクリート造なら47年など、建物構造によって変わります。

経年劣化控除の計算式

耐用年数が定められている部位では、借主負担額は次の式で計算します。

残存価値 = 新品価格 × (耐用年数 - 入居年数) / 耐用年数

たとえば、クロス張替え費用が90,000円、入居年数が3年、耐用年数が6年の場合です。

90,000円 × (6年 - 3年) / 6年 = 45,000円

借主の過失でクロスを汚損していたとしても、入居3年なら残存価値は50%です。借主負担の目安は45,000円になります。入居5年なら約17%、入居6年以上なら残存価値は1円として扱われます。

この計算は「新品価格」ではなく、実際に借主負担とされる補修範囲の費用に掛けます。クロス(壁紙)の一部を傷つけただけなのに部屋全体を張り替える場合、まず借主負担の範囲が壁1面なのか居室全体なのかを確認し、その範囲の金額に残存価値率を掛けます。負担割合の詳しい見方は原状回復の負担割合で解説しています。

残存価値1円とは

耐用年数を経過した時点の残存価値を、ガイドラインでは象徴的に「1円」と表しています。これは減価償却の考え方に沿っており、実務上は実質ゼロ円扱いです。クロス(壁紙)、クッションフロア、カーペット、畳床、エアコンなど6年で計算される部位は、入居6年を過ぎると借主の負担対象から外れる前提になります。借主負担額の計算式は同じで、(6年 - 入居年数) / 6年 が0以下になれば1円固定で扱う運用です。

入居年数別の借主負担シミュレーション

6年耐用の部位は、入居年数による差が大きく出ます。クロス(壁紙)、クッションフロア、カーペット、畳床、エアコンなどは同じ考え方で計算できます。減価償却の年数が同じため、同一の負担割合表で見られます。

借主負担割合の早見表(6年耐用の部位)

入居年数残存価値率クロス9万円の場合CF6万円の場合エアコン8万円の場合
1年約83%約75,000円約50,000円約66,000円
2年約67%約60,000円約40,000円約54,000円
3年50%45,000円30,000円40,000円
4年約33%約30,000円約20,000円約26,000円
5年約17%約15,000円約10,000円約14,000円
6年以上1円1円1円1円

15年で見るべき部位がある場合は、同じ式を15年に置き換えます。たとえば150,000円の部位で入居5年なら、150,000円 × (15年 - 5年) / 15年 = 100,000円です。ただし、フローリングやユニットバスのように建物耐用年数に準じるものは、15年で固定せず、建物構造や補修内容を確認します。

費用そのものが妥当かどうかは、耐用年数だけでは判断できません。単価・面積・工事範囲の確認も必要です。部位別の金額確認は原状回復の費用ガイド退去費用の金額ガイドをあわせて確認してください。

設備の耐用年数と省令との対応関係

国交省ガイドラインの耐用年数は、税務上の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を参考にしています。クロスやカーペットなどは6年で残存価値1円となるように、建物と一体性の強い部位は建物本体の耐用年数に準じるように整理されています。

設備では、エアコン、ガス機器、便座、流し台、洗面台、インターホンなどが6年で計算されることが多い項目です。一方、給排水・衛生設備、ガス設備、冷暖房・ボイラー設備など、省令上は建物附属設備として10年、13年、15年といった区分が置かれるものもあります。退去精算では、ガイドライン上の対象部位と、税務上の資産区分を混同しないことが重要です。

給湯器は特に誤解が出やすい設備です。実際の使用寿命は10年程度を見込むことが多く、省令上の建物附属設備の区分とも関係しますが、退去精算で借主に交換費を請求する場面では、設置時期、故障原因、借主の過失の有無、残存価値の考慮を分けて見ます。10年使用した給湯器が自然故障しただけなら、通常は貸主側の維持管理の問題です。

耐用年数を過ぎた場合の特殊論点

耐用年数を過ぎた部位は、ガイドライン上「残存価値1円」として扱われます。これは、借主に新品交換費用を負担させないための考え方です。入居7年でクロスを汚してしまった場合、クロス自体の残存価値はほぼありません。

ただし、残存価値1円は「何をしても請求されない」という意味ではありません。借主の故意・過失によって通常使用の範囲を超える損傷が生じた場合、貸主は損傷の事実を主張できます。たとえば、壁下地まで破損している、臭い除去のために特別清掃が必要、設備の不適切使用で周辺部まで被害が広がった、といった場合です。

このときも、請求できるのは損害との因果関係がある範囲に限られます。古いクロスを新品にする費用をそのまま全額請求するのではなく、残存価値、補修範囲、通常損耗との区別、グレードアップ分の除外を説明できる必要があります。

見積書で確認すべき5つの項目

退去費用の見積書を受け取ったら、次の5点を確認してください。

  1. 損傷原因が通常損耗か、借主の故意・過失か
  2. 部位ごとの耐用年数が記載されているか
  3. 入居年数または前回施工日からの経過年数が反映されているか
  4. 張替え範囲が毀損箇所に対応しているか
  5. 残存価値率と借主負担額の計算式が示されているか

とくに「一式」「全額借主負担」とだけ書かれた見積書は、ガイドラインに沿った説明として不十分です。クロスならどの壁面か、床ならCFなのかフローリングなのか、設備なら設置日と故障原因は何かを確認します。

管理会社側も、退去立会い時に写真、施工履歴、部位別の単価、負担割合をそろえて説明すると、トラブルを抑えやすくなります。借主側は、その場で精算書にサインせず、内訳を持ち帰って確認しても問題ありません。

useful-life DBの使い方

このサイトでは、部位ごとの耐用年数を個別ページで整理しています。まず全体像をこの記事で確認し、見積書に出ている部位だけ詳細ページで計算例を見てください。

耐用年数は、退去費用を一律に削るための交渉材料ではなく、通常損耗・過失損傷・残存価値を分けて説明するための基準です。見積書の金額に疑問がある場合は、部位ごとの詳細ページとガイドラインの考え方を照合し、根拠を確認しましょう。

まとめ

原状回復ガイドラインの耐用年数は、借主が過失で損傷させた場合でも、経年劣化分まで負担しないようにするための計算基準です。クロス、クッションフロア、カーペット、畳床、エアコンなどは6年で残存価値1円となるように計算します。

一方、畳表や襖紙・障子紙は消耗品として経過年数を考慮しない扱い、フローリング部分補修や鍵紛失も経過年数を考慮しない扱いです。フローリング全面張替え、ユニットバス、建物と一体の設備は建物耐用年数や省令上の資産区分との関係を確認します。

退去精算で大切なのは、耐用年数表を丸暗記することではありません。民法621条の原状回復義務、民法622条の2の敷金返還、国交省ガイドライン、省令上の耐用年数を照らし合わせ、損傷原因と残存価値を分けて考えることです。

出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(2011年8月)、減価償却資産の耐用年数等に関する省令、民法621条(賃借人の原状回復義務)、民法622条の2(敷金)


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出典・参考文献

本記事で参照した国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」のPDF版は、国土交通省の公式サイトから入手できます。借主負担割合表や別表第2の経過年数による参考図も、同じPDFと公開資料に収録されています。

よくある質問

原状回復ガイドラインの耐用年数とは何ですか?
耐用年数とは、内装材や設備の価値が年数の経過で下がることを退去精算に反映するための基準です。本文では、国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が、借主の過失で毀損した場合でも経年劣化分まで負担させない考え方を採っていると説明しています。民法621条の通常損耗除外とも関係します。退去精算の根拠になります。
主な部位の耐用年数は何年ですか?
本文の一覧では、クロス、クッションフロア、カーペット、畳床、エアコンは6年で残存価値1円と整理しています。流し台・コンロ・便座なども6年を基本に定額法で計算し、フローリング全面張替えやユニットバスは建物の耐用年数に準じる扱いです。木造22年、RC造47年など構造で変わります。見積書の年数と照合します。
経過年数を考慮しない部位はありますか?
本文では、畳表、フローリング部分補修、襖紙・障子紙、鍵の紛失・破損は経過年数を考慮しない扱いとしています。これらは消耗品に近い、または部分補修の性質が強いため、クロス6年のような残存価値計算とは分けて見積書を確認する必要があります。部位名と施工範囲の確認が重要です。写真と明細で補修範囲まで確認します。
耐用年数を過ぎたら借主負担はゼロですか?
耐用年数を過ぎた部位は、国交省ガイドライン上は残存価値1円として扱われます。ただし本文では、壁下地の破損、臭い除去のための特別清掃、設備の不適切使用による被害拡大など、通常使用を超える損傷があれば、因果関係のある補修費は請求対象になり得ると説明しています。新品交換費全額とは分けて考えます。請求範囲の説明が必要です。
借主負担割合はどう計算しますか?
本文では、残存価値を「新品価格 × (耐用年数 - 入居年数) / 耐用年数」で計算します。たとえばクロス張替え90,000円、入居3年、耐用年数6年なら、90,000円 × (6年 - 3年) / 6年 = 45,000円で、借主負担の目安は50%です。入居5年なら約17%、6年以上なら1円扱いです。
クロスと壁紙は同じ意味ですか?
本文では「クロス(壁紙)」として併記しています。退去精算の見積書では「クロス張替え」「壁紙張替え」のどちらの表記もありますが、いずれもビニールクロスや紙クロスなどの内装仕上げ材を指します。国土交通省ガイドライン上の扱い、耐用年数6年・残存価値1円の計算方法は同じです。見積書の用語が異なっても、本文の早見表で借主負担額を確認できます。
残存価値1円とは具体的にいくらですか?
国土交通省ガイドラインで耐用年数経過後の象徴的な残存価値を表す金額です。実務的には実質ゼロ円扱いで、借主は新品交換費用の全額を負担しません。たとえば入居6年でクロス(壁紙)を汚損しても、クロス自体の残存価値は1円扱いです。ただし壁下地の破損など通常使用を超える損傷があれば、因果関係のある補修費は別途請求対象になることがあります。

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