退去費用の相場【2026年版】間取り別・入居年数別の目安と高額請求を防ぐ方法

監修

賃貸リフォーム研究所 編集部

原状回復・退去費用の専門メディア

賃貸物件の原状回復・退去費用トラブルに関する正確な情報発信を行う編集チーム。国土交通省ガイドラインや民法の規定に基づき、退去者・管理会社双方の視点から解説記事を制作。

「引っ越しで部屋を出るとき、退去費用はいくらかかるのか」。退去費用の相場・平均・目安は、間取り・広さ・入居年数・損耗の状態で大きく変わります。

通常の使い方をしていた賃貸物件であれば、退去費用の平均はワンルーム・1Kで2〜3.5万円、1LDK・2DKで3〜5万円が目安です。ただし、ペットの飼育や室内喫煙、設備の故意破損があれば10万円を超えることもあります。

この記事では、間取り別・広さ別・入居年数別の退去費用相場と、金額が決まる仕組み、高額請求を防ぐポイントを国土交通省のガイドラインに基づいて整理します。

退去費用の相場 — 間取り別・広さ別の目安

退去費用は「ハウスクリーニング費用」と「原状回復のための修繕費用」の合計で構成されます。通常の使い方をしていた場合の相場を間取りと広さの2軸で見ていきます。

間取り別の相場

間取り退去費用の目安内訳の考え方
ワンルーム・1K2万〜3.5万円クリーニング1.5万〜2.5万円+軽微な補修
1LDK・2DK3万〜5万円クリーニング2.5万〜3.5万円+部分補修
2LDK・3DK5万〜8万円クリーニング3.5万〜5万円+複数箇所補修
3LDK〜7万〜11万円クリーニング5万〜7万円+複数箇所補修

この金額は、通常使用の範囲内で過ごし、入居中に故意・過失による大きな損傷を残していないケースの目安です。原状回復費用は損傷の有無で変動するため、損耗がほぼない物件であれば、ハウスクリーニング費のみで退去費用が完結することもあります。

広さ(専有面積)別の相場

広さ退去費用の目安
〜25m2(単身向け)2万〜3.5万円
26〜40m23万〜5万円
41〜60m25万〜8万円
61〜80m27万〜11万円
81m2〜10万〜15万円

広さが2倍になっても費用がそのまま2倍になるわけではありません。クロス張替えの単価は㎡単価で計算されるため面積に比例しますが、ハウスクリーニングは部屋数や水回りの数で価格が決まる要素が大きく、面積ほどには増えません。

ハウスクリーニングと修繕費の比率

退去費用の内訳は、軽微な損耗の物件であれば「ハウスクリーニング費 7:修繕費 3」程度の比率です。損耗が増えるほど修繕費の比率が上がり、ペット飼育や喫煙があった物件では修繕費が全体の半分以上になることもあります。

退去費用が決まる仕組み

退去費用の金額は、その負担を借主・貸主のどちらに割り振るかというルールで決まります。基本ルールは民法と国土交通省のガイドラインに整理されています。

通常損耗・経年劣化は貸主負担

民法621条では「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷について原状に復する義務を負う」と定められていますが、同条は「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と明文化されています。

つまり、日常生活で自然に生じる損耗や、年数が経つことで自然に劣化する分は、借主に原状回復義務がありません。これらは貸主が家賃の中から負担する性質のものとされています。

通常損耗・経年劣化に該当する例:

  • 日焼けによるクロス・フローリングの色あせ
  • 家具の設置で生じた畳・カーペットのへこみ
  • テレビや冷蔵庫の背面にできる電気ヤケ
  • 画鋲・ピンの穴で下地ボードまで達しないもの
  • 鍵の交換費用(前入居者との契約終了に伴うもの)

故意・過失による損傷は借主負担

借主の不注意や故意で生じた損傷は、借主が原状回復費用を負担します。

借主負担に該当する例:

  • タバコのヤニ汚れや臭い
  • ペットによる傷・臭い・汚れ
  • 結露を放置して生じたカビ
  • 引越し作業中の家具の運搬で付けた傷
  • 釘やビスの大きな穴(下地ボードまで貫通したもの)

経年劣化控除で借主負担は減額される

借主負担に該当する損傷でも、入居期間が長くなれば借主の負担額は段階的に減ります。これは設備や内装に「耐用年数」があり、年数が経つほど残存価値が下がるためです。

国交省ガイドラインでは部位ごとの耐用年数が示されています。クロス(壁紙)・クッションフロア・畳表・カーペットは6年、フローリングは建物の耐用年数(木造22年、鉄筋47年など)と紐づきます。

クロス6年の例で考えると、入居3年で退去した場合の残存価値は約50%。新品張替え費用が4万円であっても、借主の負担は約2万円にとどまります。入居6年以上であれば残存価値は1円となり、借主負担はほぼゼロです。

控除の計算方法は原状回復の負担割合ガイドで詳しく解説しています。

入居年数で負担額はどう変わるか

クロス張替え費用5万円(6畳・壁1面相当)を例に、入居年数による借主負担の変化を見ていきます。

入居年数クロスの残存価値借主負担の目安
1年約83%約4.2万円
2年約67%約3.4万円
3年約50%約2.5万円
4年約33%約1.7万円
5年約17%約0.8万円
6年以上1円(実質ゼロ)ほぼ0円

入居年数が長いほど借主負担は軽くなります。「長く住むと汚れが蓄積して請求が増えるのでは」という心配の声もありますが、経年劣化控除の仕組みがある以上、入居年数の長さは借主にとって有利に働きます。

ただし、これは耐用年数が定められている内装・設備の話です。借主の故意・過失で生じた個別の損傷(壁穴、設備の破損など)は、修繕にかかる実費が請求されます。経年劣化控除はあくまで「壁紙の張替え費」など、内装の更新を伴うものに適用される仕組みです。

部位別の費用相場

退去費用の内訳を確認するときは、部位ごとの単価を知っておくと、見積書が妥当かどうかを自分で判断しやすくなります。

部位単価相場経年劣化適用
クロス(壁紙)張替え1,000〜1,500円/m2あり(耐用年数6年)
クッションフロア張替え2,500〜4,500円/m2あり(耐用年数6年)
フローリング補修1〜3万円/箇所部分修繕は減価償却なし
畳表替え4,000〜10,000円/枚あり(耐用年数6年)
ハウスクリーニング2万〜10万円/戸なし
鍵交換1.5万〜2.5万円/戸通常は貸主負担
エアコン修理・交換2万〜10万円/台あり(耐用年数6年)

各部位の単価相場と耐用年数の根拠データは部位別データベースで個別に確認できます。

単価データベース(部位別の費用相場)

耐用年数データベース(経年劣化控除の根拠)

退去費用が高額になりやすいケース

通常使用の範囲を超える損耗があると、相場を大きく上回る請求が来ることがあります。高額化の典型パターンを確認します。

室内喫煙によるヤニ汚れ・臭い

タバコのヤニはクロスの黄ばみとして広範囲に残ります。臭いも壁紙やクロス下の石膏ボードに染み込むため、部屋全体のクロス全面張替えが必要になることが多く、ワンルームでも10万円前後、2LDKで20万円超のケースもあります。

国交省ガイドラインでは、喫煙による汚損は「通常損耗を超える損耗」として借主負担と整理されています。

ペット飼育による損傷・臭い

ペット飼育可の物件であっても、爪痕・かじり傷・尿の染み込みは借主負担になります。フローリングの全面張替えやクロスの広範囲張替えが必要になると、ワンルームで15万円前後、2LDKで30万円超になることもあります。

ペット可物件は敷金が増額されているケースが多いものの、敷金で足りない場合は追加請求が発生します。

水回りのカビ放置

浴室・キッチン・トイレでの結露やカビを放置していた場合、シリコンコーキングの打ち直しやユニットバスのパーツ交換が必要になります。換気扇や換気窓を使わないなど借主の管理不足が認められれば、修繕費が借主負担になります。

DIY改造の元戻し費用

棚板の取り付け、間仕切り壁の追加、壁面塗装などのDIY改造は、退去時に元の状態に戻す費用が発生します。「賃貸OKのマスキングテープ下地」を使わずに直接ビス止めや塗装をしていた場合、補修費用が想定外に高額になります。

特殊な改造をした場合は、原状回復の方法を契約書で確認するか、退去前に管理会社へ相談しておくことが安全です。

その他の高額化パターン

  • 結露・湿気を放置して生じたフローリングの腐食
  • 釘・ビスで石膏ボードに大きな穴を開けた場合
  • 給湯器・エアコンを故意に破損した場合
  • 退去時に荷物を残置した場合の処分費

退去費用を抑える具体的アクション

退去費用は事前の準備で大きく変わります。借主側でできる4つの対策を順番に解説します。

入居時に部屋の状態を写真で記録する

入居時に部屋の隅々を写真で撮っておけば、退去時に「入居前からあった傷」と主張する根拠になります。クロスの汚れ、フローリングの傷、設備の不具合など、気になる箇所を日付入りで撮影してください。

撮影のポイントは「広めの引き画」と「気になる箇所のアップ」をセットで残すことです。スマートフォンのアルバム機能で日付が記録されるため、後から証拠として提示できます。

日常の掃除・換気を習慣化する

退去費用を抑える最大の対策は、入居中の生活習慣にあります。

  • 浴室は使用後に換気扇を回す
  • 結露しやすい窓・壁は冬場こまめに拭く
  • キッチンの油汚れは月1回以上の頻度で掃除
  • カーペットや畳の上に重い家具を置く場合は脚にカバーを敷く
  • 喫煙は屋外またはベランダで行う

これらは「善管注意義務」(民法400条) を果たすための日常行動として位置づけられます。義務を果たしていれば、たとえ汚れが残っても通常損耗の範囲とみなされやすくなります。

退去前の自主清掃

退去前に自分でできる範囲の掃除をしておけば、ハウスクリーニング費の請求項目が減る可能性があります。詳しくは賃貸退去前の掃除はどこまで必要?を参照してください。

ただし、契約書に「ハウスクリーニング費は借主負担」の特約がある場合は、自主清掃をしてもクリーニング費は満額請求されます。特約の有無は契約書で必ず確認してください。

退去立会いに同席して写真を撮る

退去立会いには借主が必ず同席し、損耗箇所をその場で確認します。立会い時に管理会社が指摘する損耗を「これは入居前からあった」「これは通常損耗の範囲」と反論できれば、見積もりの段階で除外できます。

立会い時に撮影した写真は、後日見積書を見直す際の根拠資料になります。立会いに参加しないと、管理会社の判定だけで原状回復範囲が決まってしまい、後から異議を唱えにくくなります。

退去費用に納得いかないときの対処法

請求書を見て金額が高すぎると感じた場合の対処法を、優先度順にまとめます。

内訳明細を提出してもらう

「原状回復工事一式 〇〇円」のような大括りの請求書では妥当性を判断できません。部位別・項目別の内訳を出してもらってください。明細を出してもらうこと自体が、不当な請求の抑止力になります。

経年劣化控除が反映されているか確認

借主負担に該当する項目でも、入居年数に応じた減価が反映されているはずです。クロス張替えで5年住んだのに「新品交換費用の100%」が請求されていれば、控除されていない疑いがあります。控除のない請求は減額交渉の対象です。

通常損耗が借主負担に含まれていないか確認

日焼け、家具のへこみ、画鋲穴など通常損耗に該当するものが借主負担に含まれていないかを確認します。該当する項目は減額を求められます。詳しくは退去費用 払わなくていいものを参照してください。

消費生活センター(188)に相談

管理会社との交渉で解決しない場合は、消費生活センターに相談できます。電話番号は全国共通の188(いやや)。退去費用トラブルは消費者トラブルとして相談を受け付けてもらえ、管理会社に対する助言や仲介をしてもらえることがあります。

少額訴訟の検討

60万円以下の金銭請求であれば、簡易裁判所の少額訴訟が利用できます。原則1回の審理で結論が出る制度で、印紙代も10万円までなら1,000円程度です。退去費用の差し引き分の返還請求や、敷金返還請求で活用されています。詳しくは少額訴訟で敷金を取り戻す方法を参照してください。

管理会社・大家さん側の視点

退去費用のトラブルは、入居者だけでなく管理会社・大家側にとっても収益と信頼に直結します。

透明性のある見積書がトラブルを防ぐ

「一式」表記の見積書は入居者の不信感を招きます。部位別・項目別の単価と数量を明示し、経年劣化控除を反映した借主負担額を記載することで、入居者からの問い合わせ対応の手間も減ります。見積書の作り方は原状回復の見積もりを正しく読むで解説しています。

入居時の記録が退去時の交渉力を決める

入居時に部屋の状態を写真で記録し、入居者と共有しておけば、退去時に「入居前からあった傷か」の議論を回避できます。退去立会いチェックリストを使って判定基準を統一することで、担当者によるばらつきも防げます。詳しくは退去立会いチェックリストを参照してください。

工事業者の選定で退去費用は適正化できる

原状回復工事の単価は業者によって2〜3割の差が出ます。複数業者から見積もりを取り、部位別単価を比較することで、オーナーへの還元と入居者への請求を適正化できます。業者選びの基準は原状回復業者の選び方で解説しています。

関連記事

出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(2011年8月)、民法621条(賃借人の原状回復義務)、民法622条の2(敷金)、民法400条(善管注意義務)、減価償却資産の耐用年数等に関する省令、消費者契約法10条


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退去費用に関するご相談はお問い合わせフォームからも受け付けています。

出典・参考文献

よくある質問

間取り別の退去費用相場はいくらですか?
通常使用の範囲なら、ワンルーム・1Kは2万〜3.5万円、1LDK・2DKは3万〜5万円、2LDK・3DKは5万〜8万円、3LDK以上は7万〜11万円が目安です。内訳はハウスクリーニング費と原状回復の修繕費で、損耗が少なければクリーニング費だけで済むこともあります。
退去費用が高くなる原因は何ですか?
室内喫煙、ペット飼育、結露やカビの放置、設備の故意破損などがあると高額になりやすいです。本文では、タバコのヤニ汚れでワンルームでも10万円前後、ペット損傷でワンルーム15万円前後、2LDKでは30万円超になる例を挙げています。
国交省ガイドラインの基本ルールは?
民法621条と国土交通省ガイドラインでは、通常の使用で生じた損耗や経年変化は貸主負担、借主の故意・過失による損傷は借主負担と整理されています。日焼け、家具跡、下地に達しない画鋲穴、前入居者との契約終了に伴う鍵交換費用は貸主負担の典型例です。
退去費用は入居年数で減額できますか?
借主負担に該当する損傷でも、内装や設備には耐用年数があり、入居年数に応じて残存価値が下がります。クロスは6年が目安で、入居3年なら残存価値約50%、入居6年以上なら1円となり、新品張替え費用をそのまま全額負担する必要はほぼありません。
退去費用に納得できない場合は?
まず精算書の内訳、負担区分、経年劣化控除の有無を確認し、根拠を示して書面で交渉します。解決しない場合は消費生活センターの188に相談できます。60万円以下の金銭請求なら簡易裁判所の少額訴訟も選択肢で、原則1回の審理で結論が出ます。

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